2026年4月開校 公立の義務教育学校「庄内よつば学園」1年から9年までの教育方針を田中校長先生に聞きました

4月、義務教育学校(施設一体型小中一貫校)として開校した、豊中市立庄内よつば学園(豊中市千成町2-2-65)。元・校長先生の教育ウオッチでおなじみの、兵庫將夫先生(左)と学校見学へ伺いました。校長の田中彰治先生(右)にお話を聞き、真新しい校舎を見学させてもらいました。
9年間で育む新しい“学び”とか“地域との絆”
2026年春に開校した義務教育学校「豊中市立庄内よつば学園」。1学期を終えた7月、同校校長・田中先生と教育コラムニストの兵庫先生による対談が行われました。地域の歴史や子どもたちの発達段階に寄り添った学校づくりの現在地、そして9年制教育ならではの魅力や課題について、率直な思いが語られました。

最高学年の9年制のクラス表示。学校の名前である“四葉”がモチーフ。至る所にこのデザインが採用されています
少子高齢化と地域再編から生まれた「9年間の学び舎」
兵庫先生(以下、兵庫): 4月に開校して約4カ月が経ちましたが、屋上のテニスコートやプール、広々とした廊下や教室など、素晴らしい環境ですね。公立の学校とは思えないほどの充実ぶりに驚きました。
田中校長先生(以下田中): ありがとうございます。この庄内よつば学園は、豊中市の「南部地域活性化構想」の一環として設立されました。北部の千里ニュータウン周辺などは子どもの数が増加傾向にありますが、南部エリアは少子高齢化が進み、単学級の小学校が増えていた背景があります。そこで近隣の3つの小学校と1つの中学校を統合し、誕生したのが本校です。
兵庫: 地域の小学校がなくなることに対して、地域の方々の反応はいかがでしたか。
田中: 歴史ある学校がなくなる寂しさはもちろんあったと思います。ただ、先行して開校した「庄内さくら学園」の事例や丁寧な対話の積み重ねもあり、「これからの子どもたちのために良い学校をつくろう」と、今では地域全体で温かく応援していただいています。校区が広がったため、阪神高速の向こう側など一部の遠方エリアの小学生を対象に、市内で初となる無料の通学バスも運行しています。


屋上にある25mプールと2面のテニスコート
「4・3・2制」のメリットと、「つなぎ目」の葛藤
兵庫: 小中一貫教育にあたり、“4・3・2制”(学年区分)を採用されていますね。
田中: はい。ファーストステージ(1〜4年生)を「学級担任制を軸とした安心・安全な土台づくり」、セカンドステージ(5〜7年生)を「教科担任制の導入や心身の変化に応じたスムーズな移行期」、サードステージ(8・9年生)を「進路を見据えた発展期」と設定しています。
兵庫: 一般的な“6・3制”とは異なる区切りですね。特にセカンドステージのあたりは子どもたちの発達も著しい時期ですが、標準服(制服)などの運用はどうされていますか?
田中: 先行する庄内さくら学園では5年生から標準服を着用していますが、本校では体の成長スピードや多様性に配慮し、8年生からの着用義務としました。7年生(中1相当)は標準服でも私服でも良い選択制にしていますが、現在は半々くらいですね。夏場はTシャツ・短パンなどラフな服装で登校する子も多いです。
兵庫: 中学入学時の環境の変化による“中1ギャップ”や不登校への影響はいかがですか?
田中: 急激な環境の変化がないため、子どもたちはなだらかに上級生へと移行できています。感覚値ではありますが、不登校傾向は減っている印象です。年の離れた兄弟姉妹が同じ校舎に通っているため、「下の子が行くからお兄ちゃんも学校へ行く」「上の子と一緒に登校する」といった、義務教育学校ならではのポジティブな相乗効果も見られます。
兵庫: 一方で、義務教育学校ならではの難しさもあるのではないでしょうか。
田中: 難しさということではないのですが、例えば6年生での「卒業式」がなく、3月もギリギリまで登校するため、小学校課程を終えたという「節目の実感」が得にくい側面があります。そのため、6年生の修了時には子どもたち自身に企画してもらうイベントを検討したり、PTA主導で記念アルバムを作成したりと、工夫を進めています。
また、教員の配置定数の仕組み上、5・6年生から完全に教科担任制へ移行するには課題もあります。何より小学生の年代には、担任の先生が教室についてくれている安心感が欠かせません。制度と子どもの発達段階のバランスをどう取るかは、今後の重要な議論です。


大・小2つのアリーナ(体育館)があり、写真は大アリーナ。空調設備も整っています。下は教室

給水機も設置
“1年勝負”の小学校と“3年スパン”の中学校
兵庫: 3つの小学校から集まった子どもたちの学級づくりや、先生方の意識はいかがですか?
田中: 今年は初年度ですので、まずは「集団づくり」を最優先に掲げています。クラス編成の段階から旧小学校の先生方が集まり、人間関係のバランスを細かく考慮して組みました。また、小・中の教員の文化の違いにも気づかされました。私はずっと中学校畑でしたので、「3年間で生徒を育てる」という感覚が染みついていましたが、小学校の先生方は「この1年でこのクラスを成長させる!」という1年勝負の熱量が非常に強い。どちらが良い悪いではなく、お互いの強みを活かしながら9年間をトータルで見守る視点を学校全体で共有しています。
兵庫: 低学年の指導ではどのような取り組みをされていますか?
田中: 1年生に“架け橋プログラム”を導入しています。園生活からのスムーズな移行を図るため、朝登校したらまず校庭で伸び伸び遊ぶ時間を設け、時間割にもゆとりを持たせています。いきなり「席についてノートを開きなさい」ではなく、体を動かして切り替える。このステップを踏むことで、1年生もとても落ち着いて学校生活を送れています。
兵庫: ICTの活用や、独自の教育プログラムについても教えてください。
田中: タブレット端末(ICT)の日常使いは徹底しています。1・2年生でもタイピングをこなし、夏休みも持ち帰って連絡帳や課題のやり取りを行っています。
また、独自の教育カリキュラムとして“表現活動”を取り入れています。4年生では吉本興業の芸人さんをお招きして漫才のノウハウを学び、実際に子どもたちが人前で漫才を披露する授業を行いました。
兵庫: 大阪の子どもたちにとって、漫才を通じた表現学習は居場所づくりや自己表現の素晴らしいきっかけになりますね!
田中: まさにその通りです。また、学校施設も“地域に開かれた場所”として設計されています。多目的室やランチルームがある地域との交流スペースは学校空間と独立させることができ、土・日や夜間には地域の避難訓練、会議、子ども食堂のカレーパーティーなどに自由に活用されています。自校調理による温かい給食も大好評で、中学生年代の残菜率(食べ残し)が激減しました。


地域棟の多目的室とキッチン
兵庫: 教室での学びだけでなく、吉本芸人さんとの漫才を通じた表現学習や、地域の方々が集う子ども食堂、自校調理の温かい給食など、学校全体に子どもたちの笑顔を引き出す仕掛けが満載ですね。
田中: 庄内エリアは昔から人情味があふれ、地域全体で温かく子どもを見守ってくださる風土があります。本校では「0歳から18歳までを地域で育てる」という意識を職員一同で共有していますが、学校が子どもたちにとっても地域の方々にとっても、安心して集える「まほろば」のような存在でありたいですね。子どもたちが大人になって地元に戻ってきたとき、「この学校で育って良かった」と思える原風景を、これからも地域と共に作っていける学校にしていかなくてはと思います。
兵庫: 温かい地域に守られながら、豊かな人間性を育んでいく庄内よつば学園のこれからが本当に楽しみです。本日はありがとうございました。
庄内よつば学園
https://www.toyonaka-osa.ed.jp/cms/shonaiyotsuba/
★この記事が気になったり、いいね!と思ったらハートマークやお気に入りのボタンを押してくださいね。
※記事に掲載した内容は公開日時点の情報です。変更される場合がありますので、お出かけ、サービス利用の際はHP等で最新情報の確認をしてください
この記事を書いたのは…

リビング北摂Web
豊中、吹田、池田、箕面、高槻、茨木エリアのグルメ、イベント、お出かけ情報が満載の「リビング北摂Web」。地元在住の「リビング地域特派員」が街ネタを発信する「地域特派員レポート」のほか、「北摂のニュース」など地元密着のニュースやトピックスを盛りだくさんに発信しています。
※公開日、公開内容は「リビング北摂Web」に掲載された時点の情報です。既に内容が変更されている場合がありますので、お出かけの際はHPなどで最新の情報を確認してください














