【堺】音屋組・稲本渡さん<後編>音楽を通して堺の魅力を発見

【堺】音屋組・稲本渡さん<後編>音楽を通して堺の魅力を発見

さまざまな魅力を持つ堺ですが、街の魅力を生み出すものは、やっぱり人!

前回に続き、音屋組の代表・稲本渡さんをご紹介します。後編では、地元・堺への思いに迫ります。

子ども時代から身近だった地場産業

堺で生まれ育ち、現在も堺を拠点に活動を続ける稲本さん。実家は堺区の町家で、地場産業を身近に感じる場所で子ども時代を過ごしました。

「同級生や先輩にも、親が刃物屋さんとか和菓子屋さんとか、地場産業で生計を立てている家が多かったんです。だから子どもながらに『将来は家業を継ぐ』という考え方を当たり前のように感じていました。私の場合は、それが音楽だったわけです」

同級生たちとの交友関係は大人になってからも続き、音楽で地元を盛り上げる活動へとつながっていきます。

 

音楽×地場産業のコラボレーション

会社設立と時を同じくして、稲本さんの事業は「おおさか地域創造ファンド」に採択されます。これは地域資源を活用した新事業を支援するもので、稲本さんは音楽と堺の地場産業をコラボさせた演奏会「堺輪音(さかいわおん)」を考案しました。

堺市内で何度か開催された「堺輪音」ですが、開催場所が何ともユニーク!

そのいくつかをご紹介すると・・・

妙國寺

徳川家康が見たものと同じ景色を見ながら、お香の香りに癒されつつ、和菓子を味わいながら、という堺の魅力をギュッと詰め込んだ演奏会を行いました。

茶寮 つぼ市製茶本舗 堺本館

新茶のテイスティングと演奏会を同時に楽しめるイベントとして開催。音楽を接点に、お茶の魅力を多くの人に知ってもらう機会となりました。千利休が聞いたかもしれない、その当時に流行っていたといわれる曲を選んで演奏したそうです!

 

阪堺電車

浜寺公園から我孫子道まで、電車内で演奏を楽しみ、車庫見学なども楽しめるイベント。音楽好きも電車好きも大満足の一日となりました。

 

山口家住宅

言わずと知れた堺の名所。昔のお屋敷は木造で天井が高いので、音の響きが良く、まさに天然のホールなのだそうです。

サンスクエア堺で集大成コンサート

この「堺輪音」の集大成として、音楽ホールでのコンサートも行われました。ここでは世界的な竹工芸家の田辺竹雲斎さんの作品を舞台上に飾り、空間デザインは間宮吉彦さん、という豪華な演出。ロビーでは宝泉菓子舗さんが特別に作った楽器の形の練り菓子を販売。これが爆売れしたそうです!

 

もしかすると、読者の中には実際に観に行かれた方がいるかもしれませんね。

これらの演奏会を企画する上で稲本さんが大切にしていたのは「五感を刺激する」ということ。「五感を同時に刺激することで幸福度を上げる」というテーマのもと、音楽とコラボできる地域資源を探したそうです。

そうしたら、和菓子、お茶、お香、寺社仏閣・・・と堺には全部そろっていたわけですね。

「『ものの始まり何でも堺』って言いますけど『ほんまやん!』て思いましたね。堺の地域資源てすごいなと」

新型コロナもあって残念ながらこれらのイベントはなくなってしまいましたが、ぜひまた復活してほしいと思います!

 

堺を演奏家が羽ばたく聖地に

2017年には兄の響さんとともに堺親善アーティストに就任。演奏会で訪れる全国各地で堺市の魅力をアピールしています。

そんな稲本さんが今、力を入れているのが、次世代の演奏家を育てるコンクールです。

「堺管打楽器コンクール」の名で10年ほど前からコンクールを主催。木管楽器、金管楽器、打楽器の3部門に分かれ、それぞれ中学生の部、高校生の部、一般の部で賞を競います。

コンクールの開催趣旨の中には次のような一節があります。

「歴史と文化の街・堺から将来世界に羽ばたく音楽家を育成・サポートしてまいります」

この趣旨のとおり、受賞者を決める本選を堺で行うことで未来の演奏家たちが毎年、堺に集結します。稲本さんはコンクールに込めた思いを次のように語ってくれました。

「堺から優秀な演奏家を輩出する、という文化の土壌を作りたい」

いずれ堺が「若手演奏家の聖地」と呼ばれる日が来るかもしれませんね。

音楽を日常の“当たり前”に

最後に、これからの堺に対する思いを聞いてみました。

「堺には良いものがたくさんあるし、愛着や誇りを持っている市民の方も多いと思います。ここに音楽をはじめとした芸術が浸透して、より魅力的な街になればいいなと。

ウィーンでは毎日オペラを上演していて、気軽にフラっと立ち寄って鑑賞できる機会があります。そんな風に、音楽に触れる場が日常にあって、仕事終わりに『今日はコンサートを見て帰る』みたいなことが当たり前になれば、うれしいですね。

だからホールのように、ちょっと敷居の高い場所だけでなく、公園など身近な場所で音楽に触れる機会を作っていきたいです」

音楽の可能性を追求しつつ、地場産業の魅力も発掘し、堺をより魅力あふれる街にしようと奔走する稲本さん。今後のさらなる活躍が楽しみです!

 

株式会社音屋組

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ジモトミンフーキー

泉北でフリーライターをしています。町の小さな会社や、そこで働く人たちのストーリーを紡ぎながら町の魅力を紹介したいと考えています。泉北が「明るい未来に向かって積極的に挑戦する人」であふれる町になればいいなぁ、などと思いつつ。よろしくお願いします。

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