【柏市】〈アートラインかしわ2025③〉「共晶点」16人の柏ゆかりの作家が放つ、まばゆい化学反応

【柏市】〈アートラインかしわ2025③〉「共晶点」16人の柏ゆかりの作家が放つ、まばゆい化学反応

今年14回目となる共晶点。

柏にゆかりのある16人の作品が柏市民ギャラリーに集結します。

「共晶点」とは「複数の成分が混ざり合う溶液から共融混合物が生じる温度」。

日本画、油絵、彫刻、金工、刺繍、折紙といった、個々の作品がどのように融合し、どんな空間が生まれるのでしょうか?

初日にお会いした4人の作家さんたちにお話をうかがい、共晶点の魅力を探ってみました。

見る人の感性にゆだねて――日本画家・むらいゆうこさん

――むらいさんの作品を拝見していると、なにか懐かしさを感じるのですが…。

むらい氏:私が絵を描くとき、自分の記憶や思い出と結びついているからではないでしょうか。

――描きたいと思うきっかけは?

むらい氏:季節の花を見たり、街の風景を見たりすると、感情がよみがえってくるような瞬間があって、こういうところに登場人物にかくれんぼさせたら面白いなとか、配管が生き物に見えて妄想がふくらんだりして「描かなきゃ!」って(笑)。

――そんなときは写真を撮って描かれるんですか?

むらい氏:雰囲気を再現したいので、極力写真は撮らないようにしています。30~40分スケッチして、わからなくなったらまた見に行って。記憶が優先。絵の中でつじつまが合うようにしています。

――来場した方にはどんなふうに見ていただきたいですか?

むらい氏:ご自身の感情や記憶と重ねて見ていただけたらと思います。その方がご自身と対話できたらと。

――ありがとうございます。ゆっくり対話させていただきます。

第72回柏市文化祭ポスターも手掛ける、むらいゆうこさん。隣に見える作品は「緑雨」。「柏ふるさと公園」の柳が傘のようにしなだれていたのを見たのがきっかけだそうです。

第72回柏市文化祭ポスターも手掛ける、むらいゆうこさん。隣に見える作品は「緑雨」。「柏ふるさと公園」の柳が傘のようにしなだれていたのを見たのがきっかけだそうです。

むらいさんが卒業した小学校を題材とした作品「下校の時間」。それぞれのウサギのキャラクターを想像したり…と、細部まで見ていただきたい筆者のイチオシ作品!

むらいさんが卒業した小学校を題材とした作品「下校の時間」。それぞれのウサギのキャラクターを想像したり…と、細部まで見ていただきたい筆者のイチオシ作品!

「ホワイトノイズ」。この絵の中に入って、この雰囲気を体験したい…そんな気持ちになります。

「ホワイトノイズ」。この絵の中に入って、この雰囲気を体験したい…そんな気持ちになります。

リビングを演出する作品を――襖絵師・島田由子さん

――今回は2種類の作品を出されていますが?

島田氏:今年は掛け軸を市民ギャラリーに展示したかったんです。共晶点の雰囲気を想像しながら、床の間でなく、リビングでも使えるような作品に挑戦してみたくて。

――というと、制作するときは自分の中の気持ちを表現するというより…?

島田氏:襖絵師ですので、使う空間をイメージして、その空間を演出することが制作の出発点です。

――今回の制作でのご苦労などは?

島田氏:私の絵を掛け軸に仕上げてくださるのは表具師さんの仕事なので、それぞれの部位の素材や色の指定は、私の方ではできないんです。お伝えしたのは「リビングで使えるようにしたい」というイメージだけ。

――何回も一緒にお仕事している方なんですか?

島田氏:いえ、今回が初めてで。でも、私の思いをくんで、控え目に仕立ててくださったんですね。

――絶妙なコラボなんですね。島田さんは10/18(土)に開催される、アートラインかしわの「コーヒーでアートを楽しもう!」の講師も務めてくださいます。こちらもよろしくお願いいたします。

↓↓「コーヒーでアートを楽しもう!」の詳細はこちら↓↓

いつも気さくにお話しくださる島田さん。中国料理店「文菜華」の壁面も手掛けている方なんですよ!

いつも気さくにお話しくださる島田さん。中国料理店「文菜華」の壁面も手掛けている方なんですよ!

掛け軸「静謐」。リビングをさりげなく豊かにしてくれそうですね。

掛け軸「静謐」。リビングをさりげなく豊かにしてくれそうですね。

「収穫祭 葱」(左)と「収穫祭 蕪」(右)。「静謐」にも金箔が使われていますが、同じ金箔を使っても、華やかな作品も展示してみたかった、と島田さん。どちらのお野菜も柏の名産!

「収穫祭 葱」(左)と「収穫祭 蕪」(右)。「静謐」にも金箔が使われていますが、同じ金箔を使っても、華やかな作品も展示してみたかった、と島田さん。どちらのお野菜も柏の名産!

白の世界――彫刻家・羽室功二さん

――毎年、作品の白い色が印象的ですが、なぜ白を選ばれるんですか?

羽室氏:(しばらく考えて)白いイメージが浮かんでくるので、それに向かって制作していく感じです。

――タイトルの「coexist」とは、どんな意味なのですか?

羽室氏:「共存」という意味で、自分の在り方、存在についてといったところでしょうか。生まれてから死ぬまでの一生。人生を、下から上がっていくものという感覚でとらえています。

――まさに、今生きているということなんですね。このような大型の立体作品はどこに保管されているのですか?

羽室氏:現在、県立柏の葉高校の前に「柏アトリエ」という共同アトリエがあるんです。東京藝術大学の卒業生を中心に、100坪くらいの倉庫を借りて使っているのですが、実は都市計画の関係で年内で使えなくなり、新しい場所を探しているところなんです。

――作品を保管する場所がなくなってしまうということですね。

羽室氏:はい。実は私の場合、繊維強化プラスチックを使っているので、においや粉塵などの影響から、制作する場所も必要になってくるんです。

――それは制作場所の確保が急務ですね。どのような場所があればよいのですか?

羽室氏:ある程度の広さがある倉庫が借りられればというところです。

――作家さんたちの創作の場が、一日も早く見つかるよう、多くの方にこの現状を知っていただきたいですね。

私の答えにくい質問にも一生懸命考えながら答えてくださった羽室さん。

私の答えにくい質問にも一生懸命考えながら答えてくださった羽室さん。

「coexist」。ライトが当たって影になっている部分にもぜひ注目してください!

「coexist」。ライトが当たって影になっている部分にもぜひ注目してください!

年内で閉鎖する「柏の葉アトリエ」。作家さんたちの制作の場の確保のため、情報提供のご協力をお願いいたします。

年内で閉鎖する「柏の葉アトリエ」。作家さんたちの制作の場の確保のため、情報提供のご協力をお願いいたします。

新たな境地――日本画家・福永明子さん

――まずは共晶点の代表として、今年の共晶点はいかがですか?

福永氏:アートラインかしわが20周年ということで、あらかじめ、テーマの「栢花繚乱」を皆さんにお伝えしたので、皆さんそれを意識した作品となっていると思います。

――それぞれジャンルも違って、個性的な作家さんばかりなのに、違和感ないですよね。

福永氏:なぜか合っちゃうんですよ。初日に搬入してみんなびっくりしています。

――共晶点ならではですね。福永さんご自身は、新しい桜の絵を描かれていますね。

福永氏:今年の春、クルマで桜をめぐる旅に出かけて、岐阜県の本巣市の淡墨桜(うすずみざくら)を描きました。日本三大桜のひとつといわれているんですよ。

――今回はめずらしくモノトーンっぽい作品ですよね。

福永氏:それが、クルマで現地に向かっているときに、「墨の作品を提供してほしい」というオファーをいただいて! じゃあ、淡墨桜を名の通り墨で描こう、と。

――描くうえで、いつもと違うことがあったりするのですか?

福永氏:赤系の絵墨と白い絵具を混ぜて、ピンクの色を作って描きました。墨は奥深くて、今回もっと勉強したいと思いましたね。島田さんにも相談したんですが、紙が違うからわからないって(笑)。

――どのあたりが難しいのですか?

福永氏:墨のにじみをいかすために、薄い和紙を使い、ドーサ(にじみ止めの液)を塗らずに、墨を入れたくないところに白抜き剤を塗ったのですが、思ったほど効果がでなかったりして…。一生かけて墨を追究したいと思いました。

――新たな展開ですね。

福永氏:日本画の制作は「日本画道」だと思っていますから。

――お話をうかがって、「道(どう)」という響きがしっくりきます。ありがとうございました。今年も多くの皆さんに見ていただきたいですね。

最近は以前ほど人物を描かなくなったという福永さん。「いい意味で我がなくって、自然に近づいているのかな。」

最近は以前ほど人物を描かなくなったという福永さん。「いい意味で我がなくって、自然に近づいているのかな。」

今回の展示は、すべて花を主題とした作品。もちろん、アートラインかしわのテーマ「栢花繚乱」を意識されています!

今回の展示は、すべて花を主題とした作品。もちろん、アートラインかしわのテーマ「栢花繚乱」を意識されています!

左の作品は、お母さまへの思いが込められた「華果」。右が「淡墨桜」。新境地の作品、じっくりご覧ください!

左の作品は、お母さまへの思いが込められた「華果」。右が「淡墨桜」。新境地の作品、じっくりご覧ください!

「共晶点」は10月14日(火)まで!お見逃しなく!

4人の作家さんたちのお話、いかがでしたでしょうか。

お話をうかがっている際に、共晶点メンバーとの交流のエピソードや柏のいろいろな地名が挙がり、やはり柏ゆかりの作家さんたちなのだなと、とても親近感を感じました。

そんな柏のゆかりの作家さんたちが集結する「共晶点」は、10月14日(火)までパレット柏で開催。

柏駅周辺にお出かけの際は、ぜひお立ち寄りいただき、個々のエネルギーの結晶を感じてください!


■共晶点
【日時】10月 10日(金)〜10月 14日(火)
【会場】柏市民ギャラリー(DayOneタワー3F パレット柏)
【料金】無料
【出展作家】
石元 靖大 (日本画)、勝川 東 (折紙)、久保 文音 (日本画)、島田 由子 (襖絵)、滝上 優 (彫刻)、筑紫 百合子 (陶芸)、名雪 大河 (日本画)、新妻 篤 (彫刻)、野田 一民 (油画)、羽室 功ニ (彫刻)、羽室 陽森 (彫刻)、福永 明子 (日本画)、宮田 琴 (金工)、むらい ゆうこ (日本画)、室屋 裕一 (彫刻)、吉岡 亮兵 (刺繍)

※お問い合わせはアートラインかしわのWEBフォームから

共晶点チラシ。表面を飾るのは福永明子さんの「大桜」。

共晶点チラシ。表面を飾るのは福永明子さんの「大桜」。

チラシの裏面は、16人の作家さんたちの作品とともにプロフィールが紹介されています。

チラシの裏面は、16人の作家さんたちの作品とともにプロフィールが紹介されています。

島田氏が講師を務める「コーヒーでアートを楽しもう!」参加者募集中!

襖絵師・島田由子さんの指導のもと、コーヒー液で絵を描くイベントが、10月18日(日)パレット柏で開催されます。

SOLITO MAGO COFFEE LABOの松本克敏さんがいれる特別なコーヒーを飲みながら、ゆったり芸術の秋をお楽しみください!

■「コーヒーでアートを楽しもう!」
【日時】10月18日(土)
①13:00~14:30(受付12:45~)
②15:30~17:00(受付15:15~)
【会場】パレット柏オープンスペースおよび多目的スペースA
【参加者】各回16名、合計32名(事前予約)
【料金】2,500円(コーヒー&クッキー付き)
※ミニコーヒーアート制作は300円、事前予約不要。ただし、島田氏の指導はつきません。
【共催】パレット柏
お申し込み:下記の「パレット柏」ホームぺージから。

「コーヒーでアートを楽しもう!」チラシ。襖絵師・島田由子さん×コーヒー焙煎士・松本克敏さんのコラボイベントです!

「コーヒーでアートを楽しもう!」チラシ。襖絵師・島田由子さん×コーヒー焙煎士・松本克敏さんのコラボイベントです!

パレット柏

  • 【住所】柏市柏一丁目7番1-301号 DayOneタワー3階
    【電話】04-7157-0280

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「ちゃーりんぐ柏」代表石井雅子

柏生まれ柏育ち。編集者・箏(こと)奏者。市民活動家の両親が2015年前後に他界したことをきっかけに、柏に興味を持つようになる。2021年、柏の歴史スポットを自転車で巡る「ちゃーりんぐ柏」を立ち上げる(2022年市民公益活動団体登録)。2023年5月、補助金申請や情報発信、連携などをサポートする中間支援団体「ジセダイ歴史文化継承研究所」を設立、事務局長を務める。2024年8月柏に特化した観光会社「かしわグリーン観光社」を設立、代表を務める。

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