【柏】篠籠田の夏は子どもも大人もアツイ! 華麗! 県指定無形文化財「三匹獅子舞」

【柏】篠籠田の夏は子どもも大人もアツイ! 華麗! 県指定無形文化財「三匹獅子舞」

3年ぶりに復活した、県の無形民俗文化財「篠籠田(しこだ)の三匹獅子舞」。
正直、獅子舞がこれほど洗練されていて見ごたえのあるものだとは思っていませんでした。
今回、300年の歴史を誇るこの伝統芸能を取材させていただき、伝統を守る篠籠田の人々の強くアツイ思いに触れてきました!

そもそも「篠籠田(しこだ)」って?

「篠籠田」という地名からして歴史のありそうな雰囲気を漂わせていますが、実際、平安初期には「志子田」、室町時代には「色陀」という地名で当時の文献に登場します。
この地は、中世に成立した、柏や我孫子、茨城県南部などを含む「相馬御厨(そうまのみくりや)」の南西端にあたるところ。現在の地名になったのは、江戸時代に入ってからです。
ちなみに相馬御厨というのは伊勢神宮の荘園で、寄進したのは、NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」で岡本信人さん演じる千葉常胤(つねたね)の父・千葉常重(つねしげ)です。

三匹獅子舞が演じられる真言宗豊山派の「西光院」。柏でも屈指の牡丹の名所でもあります。

三匹獅子舞が演じられる真言宗豊山派の「西光院」。柏でも屈指の牡丹の名所でもあります。

龍頭がカッコイイ! 篠籠田の三匹獅子舞

篠籠田の三匹獅子舞は元禄時代(1688~1704年)頃に始まったといわれています。現在は毎年8月16日、西光院の施餓鬼の日におこなわれ、祖先の霊をなぐさめ、五穀豊穣と家内安全を祈願して演じられます。
篠籠田は古くから稲作が発達していたことから、水を支配する龍神信仰が生まれ、雨ごいのために始まった行事だといわれます。そのため、篠籠田の獅子は龍頭となっています。
昭和49年(1974年)、後継者不足から「篠籠田の三匹獅子舞保存会」が結成され、現在にいたります。昭和50年(1975年)には千葉県の無形民俗文化財に指定されました。

本番前、西光院門前の保存会の方の敷地で練習をするお囃子のメンバーたち。以前柏第七小学校にあった伝承クラブ・伝承部の出身者、そして、今年募集して集まった七小の生徒さんたちで構成されています。

本番前、西光院門前の保存会の方の敷地で練習をするお囃子のメンバーたち。以前柏第七小学校にあった伝承クラブ・伝承部の出身者、そして、今年募集して集まった七小の生徒さんたちで構成されています。

西光院本堂の前の芝に4つの竹を立て、しめ縄とともに作られた結界が舞台となります。

西光院本堂の前の芝に4つの竹を立て、しめ縄とともに作られた結界が舞台となります。

とにかく楽しい! 「猿舞(さるまい)」

時間になると、笛の音とともに、猿・狐・ひょっとこに先導され、三匹獅子が登場。
牡丹の花をあしらった「花笠」の四人が四隅に陣取り、獅子たちは舞台後方で構え、「猿舞」の始まりです。

狐と猿の2人の演者が金棒を鳴らしながら歩き、演者たちを先導します。演者は皆、裸足です。

狐と猿の2人の演者が金棒を鳴らしながら歩き、演者たちを先導します。演者は皆、裸足です。

「花笠」は四隅に、お囃子は舞台上手に着座して演奏を始めます。

「花笠」は四隅に、お囃子は舞台上手に着座して演奏を始めます。

お囃子に合わせて軽快に踊り、お囃子のフレーズの終わりに「ホー!」と甲高いかけ声をかけます。

お囃子に合わせて軽快に踊り、お囃子のフレーズの終わりに「ホー!」と甲高いかけ声をかけます。

終盤では「塩まき」をおこないながら踊ります。前列で見ていた筆者は全身塩だらけになりましたが、この塩を浴びると、一年間病気をしないという言い伝えも…。

終盤では「塩まき」をおこないながら踊ります。前列で見ていた筆者は全身塩だらけになりましたが、この塩を浴びると、一年間病気をしないという言い伝えも…。

しなやかな舞い! 「女獅子」

三匹獅子舞の最初は、女獅子(めじし)です。腰をかがめ、頭を左右に振りながら、ゆっくりと舞台をまわります。
女獅子は小さな角が1本あり、赤い布をつけているのが特徴です。

途中までは白狐が女獅子を追いかけます。子孫繁栄の願いが込められているのでしょう、このあと怪しげな小道具が懐から現れます。

途中までは白狐が女獅子を追いかけます。子孫繁栄の願いが込められているのでしょう、このあと怪しげな小道具が懐から現れます。

女獅子を演じるのは、若手のホープ椎名彗哉さん。お囃子、猿舞を経て、女獅子は4~5回目。「お面をかぶって布がさがると、スイッチが入って、この感覚だなと。」

女獅子を演じるのは、若手のホープ椎名彗哉さん。お囃子、猿舞を経て、女獅子は4~5回目。「お面をかぶって布がさがると、スイッチが入って、この感覚だなと。」

手前で笛を吹く女性が笛頭の西澤愛さん。七小の中学年のときから始め、約20年間お囃子に携わっているそうです。「これがないと夏が始まらない!」

手前で笛を吹く女性が笛頭の西澤愛さん。七小の中学年のときから始め、約20年間お囃子に携わっているそうです。「これがないと夏が始まらない!」

力強い舞い! 「中獅子」

次は、若い男性の獅子「中獅子」です。大獅子とともに、男性の獅子は、角が2本、ひげと牙があるのが特徴です。

舞いが始まるまでは、頭部は布で覆われていますが…。

舞いが始まるまでは、頭部は布で覆われていますが…。

布を持ちながらの舞いがしばらく続き…。

布を持ちながらの舞いがしばらく続き…。

手を放すと、獅子の頭部が現れます。

手を放すと、獅子の頭部が現れます。

若者の獅子らしく、力強くメリハリをつけて舞います。

若者の獅子らしく、力強くメリハリをつけて舞います。

ダイナミックな舞い! 「大獅子」

最後は「大獅子」です。獅子一族の長とされ、貫禄のあるダイナミックな舞いが演じられます。

四隅の花笠に向かって、たわむれるように舞います。

四隅の花笠に向かって、たわむれるように舞います。

三匹の獅子のうち、舞いをしていない二匹の獅子は、腹に装着した太鼓を打ち鳴らします。この間、保存会の方々が、ずっと獅子たちをうちわで扇いでいます。

三匹の獅子のうち、舞いをしていない二匹の獅子は、腹に装着した太鼓を打ち鳴らします。この間、保存会の方々が、ずっと獅子たちをうちわで扇いでいます。

フィナーレ「精進返し」

大獅子が舞い終わると、花笠が一列に並び、今度はその間を三匹の獅子たちが縫うように舞い始めます。
そして、最後に「念仏」と称される和歌を全員で詠じて演目が終了します。
「大寺の香の煙は細けれど天にかえりて黒雲となる」

※西光院で詠じられる念仏は上記の和歌ですが、かつて、神社や地主宅で実施されていたときは、場所によって、念仏の内容が異なっていたそうです。

花笠の間を舞う獅子たち。圧巻です! 「個人の振り付けを覚えるより、他の演者とそろえて踊る方が難しい」と顧問の小田山博史さん。

花笠の間を舞う獅子たち。圧巻です! 「個人の振り付けを覚えるより、他の演者とそろえて踊る方が難しい」と顧問の小田山博史さん。

念仏では獅子たちは座って太鼓をたたきます。写真中央上部でしゃがんでいるのが顧問の小田山さん。「今年やめたら復活できなくなる。自分の代で終わらすわけにはいかない」と、万全の感染症対策のもと、この日を迎えたそうです。

念仏では獅子たちは座って太鼓をたたきます。写真中央上部でしゃがんでいるのが顧問の小田山さん。「今年やめたら復活できなくなる。自分の代で終わらすわけにはいかない」と、万全の感染症対策のもと、この日を迎えたそうです。

お囃子も笛を置いて歌います。笛頭の西澤さんの近くに座っていた筆者は、彼女の声がひと際、響いて聞こえ、その思いが伝わってくるような気がしました。

お囃子も笛を置いて歌います。笛頭の西澤さんの近くに座っていた筆者は、彼女の声がひと際、響いて聞こえ、その思いが伝わってくるような気がしました。

終了後…

初めて出演したお囃子のお子さんたちに感想を聞くと、「息が苦しくて、無意識で吹いていました」「申舞の人たちと一体感を持てたのが楽しかった」と話してくれました。

記事を書いている今も、笛の音が頭の中で軽快に鳴り響いています。
時代の変化によって、獅子舞の内容も少しずつ変わってきていますが、洗練された様式美を感じ、見る人の心を打つのは、篠籠田の人々が300年間演じ続けてきたからこそ、そして土地に生きた人々の思いをつないできたからこそ。
この伝統芸能を楽しみ親しんでいる子どもたちがいる限り、貴重な地域の伝統は守られていくのではないか…彼らの笑顔を見て、強く感じました。

お囃子の楽譜を見せていただくと、「トラリヒヒ~」といったカタカナが書かれていてびっくり。耳で聞いて覚えてしまうそうですが、初めて笛に触れて練習を始めたのが7月下旬だと聞いてまたびっくり。

お囃子の楽譜を見せていただくと、「トラリヒヒ~」といったカタカナが書かれていてびっくり。耳で聞いて覚えてしまうそうですが、初めて笛に触れて練習を始めたのが7月下旬だと聞いてまたびっくり。

最後に出演者そろって記念撮影。来年の出演について質問したお子さんたちの返答はみんな「来年もやりたい!」

最後に出演者そろって記念撮影。来年の出演について質問したお子さんたちの返答はみんな「来年もやりたい!」

西光院

  • 【住所】千葉県柏市篠籠田1214

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「ちゃーりんぐ柏」代表石井雅子

柏生まれ柏育ち。編集者・箏(こと)奏者。市民活動家の両親が2015年前後に他界したことをきっかけに、柏に興味を持つようになる。2021年、柏の歴史スポットを自転車で巡る「ちゃーりんぐ柏」プロジェクトを立ち上げ、2022年市民公益活動団体として登録。2023年5月、補助金申請や情報発信、連携などをサポートする中間支援団体「ジセダイ歴史文化継承研究所」を設立、事務局長を務める。

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