【柏】由緒ある旅館をリノベ。温もりと癒しの古民家カフェ「YADOYA」

【柏】由緒ある旅館をリノベ。温もりと癒しの古民家カフェ「YADOYA」

昨年12月7日、布施弁天近くに「街かどcafe YADOYA」という古民家カフェがオープンしたのをご存じでしょうか?

築120年の歴史ある「橋本旅館」をリノベした「YADOYA」さん。
レトロという以上に温もりある空間。この心地よい感覚はどこからくるのだろう…?
そして、このカフェを経営する㈱SLOW VILLAGE代表の小野寺氏と、橋本旅館の深いつながりとは…?

国の登録文化財級の建築物ともいわれるYADOYAさんの秘密をさぐっていきます。

土方歳三も!? 徳川慶喜も!? 歴史を見守ってきた橋本旅館

江戸初期の利根川東遷事業により、江戸への物資輸送路の荷上場として布施河岸の需要が増し、飛躍的に繁栄していく布施村。
それにともない、領主の庇護や地元の有力者たちによる桜山の整備が功を奏して、「布施弁天 東海寺」は江戸期屈指の観光スポットに成長していきます。

橋本旅館は、そんな旅人をもてなすために、天保年間(1830~1844年)に創業されました。
幕末には、北海道に向かう土方歳三が宿泊し、また、徳川慶喜が鴨猟の際に利用したというエピソードからも、橋本旅館の重厚な歴史がうかがえるでしょう。

関東三大弁天のひとつ「布施弁天 東海寺」。言わずと知れた桜の名所ですね。

関東三大弁天のひとつ「布施弁天 東海寺」。言わずと知れた桜の名所ですね。

布施入口交差点からくると、布施弁天通りの途中で出会える「㈱オリエント企画」さんの恐竜たち。いつ見てもテンション上がります!

布施入口交差点からくると、布施弁天通りの途中で出会える「㈱オリエント企画」さんの恐竜たち。いつ見てもテンション上がります!

オリエント企画さんを過ぎ、坂をくだった先にYADOYAさん、そして布施弁天があります。遠くには、利根川対岸の取手の緑地もわずかに見えています。

オリエント企画さんを過ぎ、坂をくだった先にYADOYAさん、そして布施弁天があります。遠くには、利根川対岸の取手の緑地もわずかに見えています。

築120年の歴史ある旅館をリノベして古民家カフェに!

現在の建物は、利根川の水害により昭和初期に建て替えられ、昭和30年頃まで旅館として営業していました。
その後、住居として使用されたのち、昨年、㈱SLOW VILLAGEの代表・小野寺良光氏の目にとまったというわけです。
小野寺氏は、建物の持ち味を生かしながら、砂壁を漆喰で蘇らせるなど、丁寧にリノベーションを進めて、昨年12月に古民家カフェをオープン。(小野寺氏はリノベーション事業も手掛けています。)

↓↓リノベの様子はお店のInstagramからもご覧になれます↓↓

かつて正面中央には、たくさんの旅人を迎え入れた玄関がありました。(住居として使われるようになってからは閉鎖。)

かつて正面中央には、たくさんの旅人を迎え入れた玄関がありました。(住居として使われるようになってからは閉鎖。)

美しい瓦の並びにもぜひ注目してください!

美しい瓦の並びにもぜひ注目してください!

建物の裏手にまわって2階からカフェに入ります。かつて2階は団体客を受け入れ、春には「新四国相馬霊場八十八か所巡り」のお遍路さんたちが訪れたそうです。

建物の裏手にまわって2階からカフェに入ります。かつて2階は団体客を受け入れ、春には「新四国相馬霊場八十八か所巡り」のお遍路さんたちが訪れたそうです。

小野寺氏と橋本旅館の運命的な出会いとは?

柏駅前の「古民家サロンSLOW」など、リラクゼーションサロンを経営している小野寺氏は、いつか飲食店も手掛けたいと思っていたそうです。
そんなとき、知人からこの建物を紹介され…。

実は、後からわかったことですが、昭和の建て替え工事に携わったのは、大工さんだった小野寺氏の曽祖父にあたる方だったのです。まさに運命的な出会い!
「ひいおじいさんが造ったものを、世代を超えて伝えていくのが私の役割だと思っています。」

重厚な色合い、美しい木目の家具にグッときます。奥の丸窓は、階下の台所から料理を出す頃合いを見るために使われていたそうです。

重厚な色合い、美しい木目の家具にグッときます。奥の丸窓は、階下の台所から料理を出す頃合いを見るために使われていたそうです。

住居だった時代に実際にここで使われていたレコードプレーヤーやラジオなどの日用品も。人の温もりを感じます。

住居だった時代に実際にここで使われていたレコードプレーヤーやラジオなどの日用品も。人の温もりを感じます。

もてなすことを熟知している空間

この日のランチタイムは、母娘の二人組、三世代のファミリー、カップル、友人同士など、様々なお客さんがいらっしゃいました。
私はひとりで伺ったのですが、ゆっくりお料理を味わい、ひたすらこの空間に身をゆだねることが心地よく、癒しという一言では言い尽くせないほど気持ちが満たされました。

布施地域の野菜をふんだんに使った「サラダランチ~5種の惣菜付~」。日によって内容は変わるそうですが、この日の惣菜は「スイスチャードの白あえ」「のらぼう菜のガーリック炒め」など。サラダにかかっている自家製ドレッシングも美味しい!

布施地域の野菜をふんだんに使った「サラダランチ~5種の惣菜付~」。日によって内容は変わるそうですが、この日の惣菜は「スイスチャードの白あえ」「のらぼう菜のガーリック炒め」など。サラダにかかっている自家製ドレッシングも美味しい!

「鶏モモのグリル~山椒赤ワインソース~」。この日知り合った方とお話しさせていただき、「私のお料理も撮っていいよ」とお声をかけてくださいました。これもYADOYAさんの縁。

「鶏モモのグリル~山椒赤ワインソース~」。この日知り合った方とお話しさせていただき、「私のお料理も撮っていいよ」とお声をかけてくださいました。これもYADOYAさんの縁。

本日のデザートの「リンゴのシナモンタルト」。どこまでも優しい味わいです。調理を担当しているのは、YADOYAの店主・山崎寛史氏。クロアチア料理をベースにした和洋のバリエーションを楽しめます。

本日のデザートの「リンゴのシナモンタルト」。どこまでも優しい味わいです。調理を担当しているのは、YADOYAの店主・山崎寛史氏。クロアチア料理をベースにした和洋のバリエーションを楽しめます。

心が満たされる一方で、自分の家族や友人、亡き両親など、近しい人たちの顔を思い出さずにはいられませんでした。
それは、この建物が、この場所が、長い歴史のなかで、多くの人々をもてなし、癒し、絆を結びつけてきた――そんな懐の深さが、私に大切なものを思い出させてくれたのかもしれません。

窓際には“アベック席”ともいわれる席が二つあり、春には美しい桜の花々を鑑賞できます。どれだけ多くの人がここから桜を眺めたのでしょうか。

窓際には“アベック席”ともいわれる席が二つあり、春には美しい桜の花々を鑑賞できます。どれだけ多くの人がここから桜を眺めたのでしょうか。

【参考資料】金出ミチル 2021「第2章 橋本旅館」『柏の歴史ある建物』柏市教育委員会

街かどcafe YADOYA

  • 【住所】千葉県柏市布施1611-3
    【電話番号】04-7161-5144
    【営業時間】ランチ11:00~16:00(L.O.15:00)、ディナー18:00~21:00(L.O.20:00)
    ※不定休につき、営業日ついては事前にお電話でご確認ください。

    【アクセス(バス)】
    ◆柏駅からバスを利用する場合
    柏駅西口より東武バス①「布施弁天」行にて「寺山坂下」下車、徒歩1分、または、②「三井団地」行にて「土谷津入口」下車、徒歩10分
    ◆我孫子駅からバスを利用する場合
    我孫子駅北口より阪東バス「あけぼの山公園入口」行にて終点で下車、徒歩10分
    ※我孫子駅から阪東バスを利用する方が、運行本数が多いのでオススメです。

紅龍山 布施弁天 東海寺

★この記事が気になったり、いいね!と思ったらハートマークやお気に入りのボタンを押してくださいね。

※記事に掲載した内容は公開日時点の情報です。変更される場合がありますので、お出かけ、サービス利用の際はHP等で最新情報の確認をしてください

  • facebookシェア
  • twitterシェア
  • LINEで送る

ライター一覧

この記事を書いたのは…

author avatar

「ちゃーりんぐ柏」代表石井雅子

柏生まれ柏育ち。編集者・箏(こと)奏者。市民活動家の両親が2015年前後に他界したことをきっかけに、柏に興味を持つようになる。2021年、柏の歴史スポットを自転車で巡る「ちゃーりんぐ柏」を立ち上げる(2022年市民公益活動団体登録)。2023年5月、補助金申請や情報発信、連携などをサポートする中間支援団体「ジセダイ歴史文化継承研究所」を設立、事務局長を務める。2024年8月柏に特化した観光会社「かしわグリーン観光社」を設立、代表を務める。

公式LINEバナー

north