思わず二度見してしまう、街なかの鮮やかな恐竜、鹿、犬たち。
近寄ってよく見てみると、誰もが知っているあのキャラクターや、ファストフード店のおまけのおもちゃがぎっしり敷き詰められています。
なぜこれほど大量の「不要になったおもちゃ」を使ったビーストたちが制作されたのでしょうか…。
「アートラインかしわ2026」のメインアーティストとして、秋の柏駅周辺を彩る美術家・藤浩志(ふじひろし)さんと藤容子さんご夫妻に密着し、お話を伺いました。
まずは、全7か所の会場と、そこで出会える11匹のビーストをご紹介しましょう。

柏高島屋本館3階 POP UP SPACE ふらりザ・ルーム「トイザウルス・ハノイ」と「嘆きのメガロケロス・白角桃次郎」。ビーストにつけられた地名は、最初に展示した土地に由来します。※この2匹は、10月21日(水)からはパレット柏にて展示。

柏高島屋S館3階エントランス「トイザウルス・京睨み」(右)と「アンガードッグ・赤」(左)。ぜひ正面から、この赤い恐竜の圧倒的な迫力を感じてみてください。

柏高島屋ステーションモールS館4階エスカレーター横「アンガードッグ・白黄」「ハッピーリング」「マンダラパネル」。エスカレーターに乗っている人の視線を釘付け!

スカイプラザ柏1階サンサン通り側入口「アンガードッグ・黒」「プラコンバ(ハウス)」。ぜひ犬小屋の後ろ側にまわって、使われているおもちゃの素材もチェックしてみてください。

柏駅周辺まちづくり情報施設 NODE(柏駅東口ダブルデッキ)「ぬいぐるみ~ズ・黄馬」。よい子のみんなは、このぬいぐるみの馬に乗ってもOK! 建物の中にちらっと見えるのは「嘆きのメガロケロス・白角赤子」。

パレット柏「嘆きのメガロケロス・青角黄次郎」。角が青く、体が黄色なので、この名前で呼ばれています。オープンスペースの近くには、「ぬいぐるみ~ズ・茶馬」も展示されています。

柏モディ2階テラス「トイザウルス・シドニー」。1階の店頭プラザからも頭部を見ることができます。手すりにかかる手の高さもぴったり。どことなく哀愁が漂っているような…。
発想の原点は「家庭内ゴミゼロエミッション」
――なぜ不要なおもちゃを素材として使うことになったのですか?
藤さん:家族と一緒にできるプロジェクトはないかと考え、1997年に「家庭内ゴミゼロエミッション」という、ゴミを捨てない実験を始めたのがきっかけです。
――今回、柏高島屋の「ふらりザ・ルーム」でも、本来なら捨てられてしまうような素材を使った作品がたくさん展示されていますね。
藤さん:1999年に箱根彫刻の森美術館で「Vinyl Plastics Collection」という展示をおこなった際、納豆のパックや総菜トレイ、ペットボトルのキャップなどを分類してずらりと並べました。今回展示している白いコートは、実はレジ袋を使って、ファッションデザイナーに仕立ててもらったものなんですよ。

柏高島屋本館3階「ふらりザ・ルーム」で展示されている1999年制作のトレンチコート。ゴミが洋服やバッグに生まれ変わり、まるで高級ブティックのように陳列されています。

同会場で展示されている、キャラクターぬいぐるみを使ったバッグ。「これを見ると、ぬいぐるみを捨てられなくなってくるでしょ?」と藤さん。
子どもたちの要望から生まれた「かえっこ」
――おもちゃを使うようになったのはいつからですか?
藤さん:(事実関係についてパートナーの容子さんとしばし協議した後)ここは事務局を担っている容子さんから。
容子さん:1999年に、福岡アジア美術館でのアートフリーマーケットに誘われたんですが、フリマで販売するような小作品が手元になくてどうしようかと相談していました。その横で当時小学1年生と保育園児の娘たちが「お店屋さん?やりたーい!」と言ったんです。それで、子どもたちを出店者に担ぎ出して、子ども部屋に散らかっていたおもちゃを並べました。
――すごい展開ですね!
容子さん:店主が子どもなのでお金ではなく物々交換方式のお店にして、交換するものがない人には絵を描いてもらいました。ガラクタのような物しかないのに子どもたちが次々に集まってきて大盛況だったんですよ。
――それが、不要なおもちゃを交換する「かえっこ」の原型なんですね!!
容子さん:はい。「これは面白い!」と思って。カードにスタンプでポイントを貯めるとか、ワークショップを組み合わせて子ども中心で運営するとか、ルールを考えて本格的に展開を始めました。展覧会やアートプロジェクトでの開催を経て、全国へ広がっていったんです。

10月11日(日)柏高島屋本館3階入口で開催された柏市初の「かえっこ」。おもちゃを持ってきていない子どもたちも、ワークショップや運営に参加してポイントを集め、おもちゃを“購入”しました。10月25日(日)柏モディ店頭プラザでも開催します!
集まった「不要なおもちゃ」がアート作品へ
――「かえっこ」の開催を通じて、おもちゃもたくさん集まってきたわけですね。
藤さん:そうなんです。倉庫にどんどんたまっていくおもちゃとじっくり向き合った結果、「水都大阪2009」の中之島会場で長期滞在型の公開制作をして生まれたのが「トイザウルス」です。
――作品はどのように作っていくのですか?
藤さん:最初に木材で全体の骨組みを作り、そこに大きめのパーツで肉付けしていきます。おもちゃの色や形を眺めていると、「ここに入れたらいいんじゃないかな」って、おもちゃが教えてくれる感覚があるんです。ピタッと形がはまる瞬間がたまりませんね。
――作品によっては、同じおもちゃがたくさん使われているのにも驚きました。
藤さん:私は1960年生まれですが、ちょうどプラスチック製品が流通し始めた時代です。恐竜が生きていたジュラ紀をはじめとする太古の時代の微生物などの遺骸が変化したものが石油であり、その石油から人間がプラスチックを生み出した――そう考えると、この素材に悠久の時を感じずにはいられません。

柏高島屋S館3階エントランスで、黄色・水色・緑色のパーツを丁寧に並べる藤さんご夫妻。「かえっこ」に出せなくなったおもちゃは分解し、サイズや色ごとに分類して保管しているそうです。

「まだどう展示するか決めてないんです」と、筆者と話しながら黄色のパーツを並べたり、崩したりすること十数分。「決めた!」とパーツを積み上げていく藤さん。壁側では、容子さんが、お菓子の袋を細く切って織りものを制作中。
藤さんにとってのアートとは
――プラスチック消費に対する環境メッセージとして作られているというわけでは…?
藤さん:そうではないです。あらかじめ決められた完成形を目指すのではなく、作りながら予想もしない次元に飛躍していく感覚が面白いんです。
――では、藤さんにとっての「アート」とは何でしょうか?
藤さん:“はみだしているもの”がアートだと思っています。「当たり前」を越えないといけない。新しいイノベーションが起きるときは、これまでとは違う価値が発生します。言葉にならないようなモヤモヤした違和感――それがアートになっていくのだと思います。
――今回の展示を、皆さんにどんな風に楽しんでほしいですか?
藤さん:ぜひじっくりいろいろな角度から眺めて、想像を膨らませてみてください。
――ご夫婦で長時間の取材にご協力いただき、本当にありがとうございました。

アートラインかしわのメンバーとともに、柏モディ2階テラスにトイザウルスを設置する藤さん。

10月10日開催された「アートラインかしわツアー」で、トイザウルスについて解説する藤さん。口の中までのぞき込んでみてください!

取材中も絶妙なコンビネーションを見せてくださった藤浩志さん・容子さんご夫妻。藤浩志さんの「アーティストトーク」が、アートラインかしわ2026最終日の11月8日(日)にパレット柏で開催されます。ぜひお越しください!
おわりに
目の前の課題に徹底的に向き合い、抱いた違和感を原動力に作品を生み出し続ける藤さん。
柏の街に現れたビーストたちは、通りかかる私たちにいろいろなことを語りかけてくれそうです。
みなさんも、秋の柏の街なかにひそむビーストたちに会いに出かけませんか。

11匹のビーストに関する妄想、目撃談、生態、世界線、設定、セリフ、物語、写真・映像などを募集中です。SNS投稿やパレット柏の専用ボックスからご応募いただけます! プレゼントをもらえるチャンスがある…かも?

タリーズコーヒー柏モディ店で恐竜「シドニー」を眺めながら、秋季限定「パンプキンプディングシェイクール」をいただきました。かぼちゃの甘み、カラメルのほろ苦さは味わうごとに変化し、カラフルな恐竜と不思議なハーモニーを奏でてくれるようでした。
アートラインかしわ2026
- 【開催期間】2026年10月7日(水)~11月8日(日)
藤浩志「11匹のケモノたちとの実践―11 beasts practice」
- ■開催期間:2026年10月7日(水)〜11月8日(日)
■会場
【A】柏高島屋本館3階 POP UP SPACE ふらりザ・ルーム[ケモノ1, 2]
※10月20日(火)まで
※営業時間:10:30~19:30
【B】柏高島屋S館3階エントランス[ケモノ3, 4]
※営業時間:10:00~20:00
【C】柏高島屋ステーションモールS館4階エスカレーター横[ケモノ5]
※営業時間:10:00~20:00
【D】スカイプラザ柏1階サンサン通り側入口(屋外)[ケモノ6]
【E】柏駅周辺まちづくり情報施設 NODE(柏駅東口ダブルデッキ)[ケモノ7, 8]
※定休日:水曜日
【F】パレット柏[ケモノ9, 10]
※営業時間:8:30~21:30
※10月21日から[ケモノ1, 2]も追加展示
【G】柏モディ2階テラス[ケモノ11]
※営業時間:8:00~22:00
■料金:無料
■お問い合わせ:アートラインかしわ
かえっこバザール
- ■日時
①2026年10月11日(日)13:00~16:00
②2026年10月25日(日)13:00~16:00
■会場
①柏高島屋本館3階入口/POP UP SPACE ふらりザ・ルーム
(ワークショップ協力:かしわ子育てまちづくりネットワーク・ここっと)
②柏モディ店頭プラザ
パレット柏 多目的スペースA(ワークショップ「木の葉のパズル」 講師:杉本祐美)
■料金:無料(事前申込不要)
■お問い合わせ:アートラインかしわ
■備考
使わなくなったおもちゃをお持ちください。
〈かえっこできるもの〉
おもちゃ、ぬいぐるみ、本、絵本、雑貨、アクセサリー
〈かえっこできないもの〉
対戦カードゲーム、ゲームソフト、壊れているもの、衛生上問題のあるもの
※おもちゃをお持ちでない方も、ワークショップや運営に参加すると、おもちゃを“購入”できる子ども通貨「カエルポイント」がもらえます。
藤浩志「アーティストトーク」
- ■日時:2026年11月8日(日)16:00~18:00
■会場:パレット柏オープンスペース
■料金:無料(事前申込不要/当日先着50名)
■お問い合わせ:アートラインかしわ
ライブペイント 30vs30
- 柏駅前通り商店街(ハウディモール)のホコ天で30人が30号のキャンバスに 絵を描くイベントです。
【日時】2026年11月1日(日)11:00~16:00
*雨天の場合は11月3日(火・祝)に順延
【会場】ハウディモール
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※記事に掲載した内容は公開日時点の情報です。変更される場合がありますので、お出かけ、サービス利用の際はHP等で最新情報の確認をしてください
この記事を書いたのは…

「ちゃーりんぐ柏」代表石井雅子
柏生まれ柏育ち。編集者・箏(こと)奏者。市民活動家の両親が2015年前後に他界したことをきっかけに、柏に興味を持つようになる。2021年、柏の歴史スポットを自転車で巡る「ちゃーりんぐ柏」を立ち上げる(2022年市民公益活動団体登録)。2023年5月、補助金申請や情報発信、連携などをサポートする中間支援団体「ジセダイ歴史文化継承研究所」を設立、事務局長を務める。2024年8月柏に特化した観光会社「かしわグリーン観光社」を設立、代表を務める。













