【柏】七福神めぐり&グルメ①(後半)江戸情緒を残す旧吉田家住宅

前回は、かしわ七福神めぐり「毘沙門天」のスポットである大洞院をご紹介しましたが、大洞院の近くにある観光スポットとしても、また、柏の代表的な観光スポットとしても、旧吉田家住宅歴史公園は一度は訪れたい場所。
そこで、今回は、改めて旧吉田家の魅力をお伝えします!

華麗なる一族・吉田家!

吉田家は中世から続く花野井村の土豪(ふだんは農業を営み、戦時には武器を持って戦う侍)。
江戸時代には、花野井村の名主として大規模農業をおこなう傍ら、醤油醸造業を手掛けたり(大正11年にキッコーマンに経営権を売却)、小金牧の目付け役である牧士(もくし)として牧の管理をおこなったりしました。
明治に入ってからは、豊富な財力をいかして、「関東宝塚計画」を構想し、現在の豊四季台団地の敷地に、当時東洋一とうたわれた競馬場をつくりました。

そんな吉田家の建物や敷地などは平成16年に柏市に寄贈されました。
その際、古文書も約2万点寄贈されたのですが、柏市が現在所有する古文書の2割にあたるそうです。

↓小金牧についての詳細はコチラの記事をご覧ください。↓

吉田家住宅、何がスゴイ?

旧吉田家住宅の主屋・書院など8棟が、柏市で唯一の国の重要文化財。また、建物だけでなく、庭園と屋敷林が国登録記念物(名勝)に登録されていて、敷地全域が見どころでいっぱいなんです。

その特徴は二つ。
①江戸時代の終わりから明治時代初めまでの当時の生活していた雰囲気がそのまま残っているということ。
②豊富な財力をいかし、高級な材料を使って、職人によって丁寧につくられた細工が、建物のあちこちに見られること。

では、早速見ていきましょう。

旧吉田家住宅のシンボル的な建物「主屋」。この左側は醤油醸造所の跡地で、塀を隔てて、吉田家の方々が現在も住んでいらっしゃいます。

旧吉田家住宅のシンボル的な建物「主屋」。この左側は醤油醸造所の跡地で、塀を隔てて、吉田家の方々が現在も住んでいらっしゃいます。

主屋

1854年に造られた主屋は、向かって右から「武家づくり」「商家づくり」「農家づくり」という、3つの性格をあわせもっています。
右側は、身分の高い武士や僧を招きいれる玄関で、その手前には、面取りの施された大きな大理石が敷いてあるところも、ぜひチェックしてくださいね!
また、主屋は、渡り廊下を通して、東の「書院」や西の「新座敷」と接続しています。

主屋右端の茅葺きおろしの部分は、層の美しさをアピールしまくりです!

主屋右端の茅葺きおろしの部分は、層の美しさをアピールしまくりです!

土間。雨天時の作業場で、わら仕事をおこなったりしていました。 見上げると、天井にはツバメの巣もたくさん見えますよ!

土間。雨天時の作業場で、わら仕事をおこなったりしていました。 見上げると、天井にはツバメの巣もたくさん見えますよ!

天井の梁は、木のまわりに竹をそえて、荒縄でしばりつけ、さらに漆喰が塗ってあります。 この下には、かまどがそなえつけてあったので、漆喰をぬることで、防火対策をしていたのです。

天井の梁は、木のまわりに竹をそえて、荒縄でしばりつけ、さらに漆喰が塗ってあります。 この下には、かまどがそなえつけてあったので、漆喰をぬることで、防火対策をしていたのです。

「ミセ」と「チャノマ」では、ひな人形展を開催中!

主屋入口から入って右側は「ミセ」と呼ばれていて、醤油の販売をおこなっていたところでした。
ここでは毎年「ひな人形展」が開催され、「春の風物詩」となっていますが、今年は、通常のおひなさまに加えて、陶芸家・江崎紀子氏の陶器でできた「陶ひな」も展示され、2種類のおひなさまを楽しめます。

七段飾りが連続して並んでいるとゴージャスですね!

七段飾りが連続して並んでいるとゴージャスですね!

「チャノマ」で展示されている「陶ひな」の陶器の趣きをぜひ味わってください! 手前の囲炉裏では、通常時には毎週木曜と土曜に実際に火を燃やしています(夏季は土曜のみ)。

「チャノマ」で展示されている「陶ひな」の陶器の趣きをぜひ味わってください! 手前の囲炉裏では、通常時には毎週木曜と土曜に実際に火を燃やしています(夏季は土曜のみ)。

豪華客座敷「書院」へ

お客さま用の玄関裏にある仏間。左下には小窓があり、すぐ裏の「ナンド」とよばれる呼ばれる主人の執務室と、メモのやり取りができるようになっています。

お客さま用の玄関裏にある仏間。左下には小窓があり、すぐ裏の「ナンド」とよばれる呼ばれる主人の執務室と、メモのやり取りができるようになっています。

主屋から渡り廊下を通っていきます。写真右側には11枚もの雨戸を収納できる戸袋も。(毎日50枚以上もの雨戸を開け閉めするそうです。)

主屋から渡り廊下を通っていきます。写真右側には11枚もの雨戸を収納できる戸袋も。(毎日50枚以上もの雨戸を開け閉めするそうです。)

書院

12畳半の2つの部屋を並べ、豪華な装飾が施された客座敷です。
見どころは「花菱組子」とよばれる欄間の造形。花びら模様をきりだして組みあげていて、見る角度によって色が違ったり影のつけ方が違ったりしています。
また、長押(なげし)に打った釘(くぎ)の頭を隠すのに使う、美しい装飾「釘隠し(くぎかくし)」にも注目!

左上が「花菱組子」の欄間。この写真では金色の「釘隠し」が2つ見えます(レプリカ)。床脇小襖には狩野派最後の当主・狩野雅信の落款があります。

左上が「花菱組子」の欄間。この写真では金色の「釘隠し」が2つ見えます(レプリカ)。床脇小襖には狩野派最後の当主・狩野雅信の落款があります。

この広々とした趣きあるお庭の景色、ゆっくり堪能してくださいね。

この広々とした趣きあるお庭の景色、ゆっくり堪能してくださいね。

新座敷

1865年に建てられた新座敷は、柏市に寄贈されるまで、吉田家の方々が日常生活を送られていたエリアです。

主屋から新座敷への通路。左上にあるのは雨戸で、上から下に三段階で閉めていきます。

主屋から新座敷への通路。左上にあるのは雨戸で、上から下に三段階で閉めていきます。

女中部屋(二人用)。防犯対策として、開閉する際に大きな音が出るような工夫がされているので、ぜひ試してみてください。

女中部屋(二人用)。防犯対策として、開閉する際に大きな音が出るような工夫がされているので、ぜひ試してみてください。

枯山水の庭園。左側に見えるのは手を洗浄する手水鉢(ちょうずばち)。吉田家には様々なデザインの手水鉢があちこちにあるので、こちらもチェック!

枯山水の庭園。左側に見えるのは手を洗浄する手水鉢(ちょうずばち)。吉田家には様々なデザインの手水鉢があちこちにあるので、こちらもチェック!

新蔵

主屋の前庭に面した新蔵では、現在、企画展「利根川と共に生きる」 という写真展が開催されています。
大正・昭和を中心とした貴重な写真から、利根川の歴史をうかがい知ることができるので、ぜひご覧になってください。
吉田家が醤油醸造業を営んでいた時代の樽の復刻版や、長押(なげし)の釘隠し(くぎかくし)の本物も展示されていますよ!

新蔵は1833年に建てられ、農機具等を収蔵する蔵として利用されました。壁にかかっているのは竹製のはしご。

新蔵は1833年に建てられ、農機具等を収蔵する蔵として利用されました。壁にかかっているのは竹製のはしご。

旧吉田家で使われていた醤油樽。左側の樽に貼ってあるオリジナルのラベルがオシャレ!

旧吉田家で使われていた醤油樽。左側の樽に貼ってあるオリジナルのラベルがオシャレ!

写真を含む全ての展示品が、吉田家が所有していたものです。

写真を含む全ての展示品が、吉田家が所有していたものです。

長屋門

現存する旧吉田家住宅の中では最も古く、1831年に造られました。
長屋の真ん中に門があるように見えるところから名付けられた「長屋門」。柏には各地に長屋門が点在していますが、この25メートルという長さはなかなかお目にかかれません!
門の左右の部屋は米蔵として使用され、西蔵は現在、「長屋門カフェ」となっています。

東側から見た長屋門。手前に見えるのは、消火用・灌漑用に使われた手押しポンプ「竜吐水」。

東側から見た長屋門。手前に見えるのは、消火用・灌漑用に使われた手押しポンプ「竜吐水」。

扉は一枚板から造られているというだけでも驚きですよね。屋根瓦は家紋入りの特注品!

扉は一枚板から造られているというだけでも驚きですよね。屋根瓦は家紋入りの特注品!

主屋と長屋門の間にある井戸。なんと、大きな石の真ん中をくりぬいて造られたそうです!(ふたが閉まっているので、中は見られません。)

主屋と長屋門の間にある井戸。なんと、大きな石の真ん中をくりぬいて造られたそうです!(ふたが閉まっているので、中は見られません。)

いかがでしたでしょうか?
建物の裏側に回ってみると、江戸城の鬼瓦やシャチホコなど、まだまだ見どころがたくさんありますので、ぜひお庭の方もぐるりと回ってみてください。
(コロナ禍ではガイドは常駐していませんが、事前に予約すればガイド付き見学も可能です。)

今回じっくり回ってみて印象に残ったのは、吉田家の財力だけでなく、吉田家の人々が道具から木々にいたるまで様々なものを大切にしていたということ。
その心が、長年にわたって継承されてきたからこその気品のある美しさ…といえるのではないでしょうか。

最後に、取材を快諾してくださいました館長の渡辺健二さま、丁寧にご案内くださった職員の今井宏さま、旧吉田家住宅歴史公園ガイドの会会長の宮田誠一さま、本当にありがとうございました。

長屋門カフェで主屋を眺めながら、フォンダンショコラと紅茶でひといき。2月に入ったら、目の前の梅も見ごろになってくるでしょう…。

長屋門カフェで主屋を眺めながら、フォンダンショコラと紅茶でひといき。2月に入ったら、目の前の梅も見ごろになってくるでしょう…。

旧吉田家住宅歴史公園

  • 【住所】千葉県柏市花野井974-1
    【電話番号】04-7135-7007
    【開館時間】9時30分~16時30分
    【休園日】毎週月曜日(月曜日が祝日の場合は翌日以後の平日)
    【入場料】大人:210円、高齢者:110円、大学生以下無料

企画展「利根川と共に生きる」

  • 【会期】令和4年1月22日(土)~2月27日(日)
    【場所】新蔵ギャラリー
    【主催】(一財)柏市みどりの基金、フォトアーカイブス柏
    【協力】柏市教育委員会

ひな人形展

  • 【会期】令和4年1月23日(日)~3月3日(木)
    【場所】主屋 ミセ
    ※花野井大洞院の「大洞院ひなまつり展」とともに、「花野井ひなめぐり2022」として開催中!

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「ちゃーりんぐ柏」代表石井雅子

柏生まれ柏育ち。編集者・箏(こと)奏者。市民活動家の両親が2015年前後に他界したことをきっかけに、柏に興味を持つようになる。2021年、柏の歴史スポットを自転車で巡る「ちゃーりんぐ柏」プロジェクトを立ち上げ、2022年市民公益活動団体として登録。2023年5月、補助金申請や情報発信、連携などをサポートする中間支援団体「ジセダイ歴史文化継承研究所」を設立、事務局長を務める。

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