少しご無沙汰してしまいました。
間が空いてしまったことでもありますし、前回は「次回はパンの保存方法について書く」と予告しましたが、もう少しタイムリーな話題に変更することにします。
大手製パン会社各社の商品の値上げに関する発表が続きました。7月から3%~8%程度の値上げ、価格にすると数円から十数円増、こうした値上げがパンだけでなく日用品に広がっているのでじわじわと首がしまっていきそうです。大手が値上げせざるを得ないほどに原材料価格、光熱費など製造原価が高騰しているのです。
小さな街のパン屋さんではすでに値上げされたところもあります、毎食パンが主食の私にとっては本当に本当に深刻な問題です。
そこで今回は「これからパンの値段はどうなるの?」について書いてみたいと思います。
今回のパンの値上がりの原因のひとつは、主原料である小麦価格の高騰です。日本の小麦自給率は現在約15%、つまり私たちが食べている小麦製品の約85%は外国産の小麦から出来ています。パンだけでなく、お菓子やうどん、天ぷら、お好み焼き、やきそば、ラーメンなど小麦は様々なものに使われているので一概にパンの85%が外国産小麦とは言い切れません、例えば2000年頃から市場を拡大している「ハード系」と分類されるパンはむしろ国産よりも外国産の小麦の方が適していたりするので、外国産の小麦が使用されている割合は85%を超えている可能性もあります。
パンの大部分は外国産の小麦で作られている前提で、その価格がどのように決まるか、簡単にご紹介します。
外国から輸入された小麦は一旦国が全て買い上げて、製粉会社に売り渡される「政府売り渡し制度」が行われています。海外に多くを頼る日本では、政府が外国にとって大口顧客になることで安定的に小麦を国内供給できるようにしているのです。
2007年4月まで、その価格を固定とする標準売渡価格制度がありましたが撤廃され、現在は小麦の国際相場や為替相場、輸送費等を考慮して価格は年に2回、春と秋に改定されています。また、マークアップと呼ばれる国の売りさばき手数料と国内で小麦を生産する農家への助成費を加算して価格が決まるのです。
地球規模での異常気象の影響による収穫量の減少、バイオ燃料の需要拡大、原油価格の高騰、コロナ禍による海上輸送費の高騰など、様々な要因で世界的に小麦の価格は上昇し続けています。
日本でも2021年秋に前期比19%上昇、2022年春に同17%上昇となっています。この「%」というのが曲者で、なんとなく1年で36%上昇したように見えますが、前期比のパーセンテージなので1×1.19×1.17≒1.392、つまり40%近くなるのです。数字で見えるより少し多く値上がり幅があると思っていただいたほうがよさそうです。
また、全世界の小麦輸出量の30%を占める有数の穀倉地帯であるウクライナの春小麦の収穫は絶望的との情報もあり、秋にはさらに一層の値上がりが予想されています。2月に戦争が始まっていたので、この4月の値上がりにも反映されたと思ってしまいがちですが、影響が出るのはまだこれからのことなのです。
あってはならない事ではありますが、万が一戦争が長引くようなことがあれば…あるスーパーのインストアベーカリーに勤める知人の話では、いまは「菓子パンは1個100円(台)」というのが一般的な概念だけれど、そう遠くない未来に「菓子パンは1個500円(台)」という時代が来るかもしれないという話がでることもあるとか、ないとか。いま「高級食パン」と呼ばれているパン並みの価格であんぱんを買う時代、そうなったら私も食生活を改めざるを得なくなるかもしれません。その日が来ないことを心から願います。
フランス菓子店 シュルプリース
- 千葉県松戸市東松戸3-6-9 エルパラシオ東松戸1F
0473-92-1113
営業時間:10時~19時
定休日:月曜日
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この記事を書いたのは…
パンコーディネーターAD福地 寧子
一日3食、年間1095食以上パンを食べ続けて四半世紀を過ぎたパン食人。パンの記事執筆、イベント企画、レシピ提案、講義登壇、メディア出演など、パンのおいしさと楽しさをより多くの人と共有すべく活動中。