【柏】祭りの季節!伝統芸能を見に行こう!①柏市指定文化財「手賀ばやし」

【柏】祭りの季節!伝統芸能を見に行こう!①柏市指定文化財「手賀ばやし」

「手賀ばやし」という柏市手賀地区の伝統行事をご存知ですか?
毎年7月の第一日曜日に手賀地区の夏祭りで奉納されるお囃子で、柏市指定文化財(無形民俗文化財)になっています。
興福院境内で神事をおこなったあと、神輿と山車が兵主(ひょうず)八幡神社に向かい、その復路に様々な演目が演じられるというもの。

当日のレポと、事前に「手賀ばやし保存会」会長の篠原喜世雄さんにお話を伺ったインタビュー記事とあわせて、手賀ばやしの魅力をご紹介いたします。

2024年7月7日(日)におこなわれた手賀のまつりのチラシ。

2024年7月7日(日)におこなわれた手賀のまつりのチラシ。

手賀ばやしの親方を務めて40年。篠原氏の思いとは。

Q:これまで手賀ばやしに携わって印象に残ったエピソードはありますか?

篠原氏:昭和61年の正月に柏そごうに依頼されたときのことですね。シンボルゾーンで、赤い毛氈を敷いて。そごうの社員食堂でごちそうになったのも印象に残っています。

Q:親方を務めるようになって何年になりますか?

篠原氏:ちょうど40年。そごうに出演したのは、まだ親方になっていない頃です。

Q:手賀ばやしはいつから始まったのですか?

篠原氏:始まった時期は不明ですが、この地区に疫病(疱瘡)が流行ったとき、茨城県稲敷市阿波(あば)の大杉神社から神様をお迎えしたのが始まりだといわれています。

Q:それで「あんばさま」と言われているんですね。

篠原氏:はい。兵主八幡神社の境内に、宝暦7年(1757年)の大杉大名神の祠が建てられているので、この頃にはおこなわれていたことがわかります。

アルバムを眺めながら丁寧にお話しくださる篠原さん。「柏祭りに出演したこともあったんですよ」と懐かしい思い出を語ってくださいました。

アルバムを眺めながら丁寧にお話しくださる篠原さん。「柏祭りに出演したこともあったんですよ」と懐かしい思い出を語ってくださいました。

Q:手賀ばやしの担い手はいらっしゃいますか?

篠原氏:以前、手賀東小学校の子どもたちに教えていたことがあって、その子たちが今30代となって出演します。ただ、ふだんはこの地域に住んでないので、前日の晩に練習して本番を迎えるんです。

Q:一日で!?

篠原氏:子どもの頃からやっていているので、体で覚えているからできるんですよ(笑)。

Q:すごいですね! 最後に、手賀ばやしへの思いを教えてください。

篠原氏:ずっと続いてほしいと思います。手賀を離れた人たちが祭りの日には帰ってくる。同級生同士が集まって話している姿を見るのが私の楽しみなんです。

終始笑顔で、気さくな篠原さん。農作業の合間にインタビューに答えてただきました。ありがとうございました。

終始笑顔で、気さくな篠原さん。農作業の合間にインタビューに答えてただきました。ありがとうございました。

興福院から兵主八幡神社へ

それでは、手賀ばやし、当日の様子を見て見ましょう。

手賀地域は、戦国時代、千葉氏の重臣だった原氏が支配していて、興福院は、戦国時代には手賀原氏の戦勝祈願寺になったと伝えられています。
付近に手賀城跡がありますが、現在興福院が建てられているところは、手賀城の二郭(二の丸)にあたるところで、手賀城の落城とともに興福院も焼失し、現在の城内跡に移築されたそうです。

興福院境内での神事。お供えが神輿の前に供えられ、神主さんによるお祓いがおこなわれます。

興福院境内での神事。お供えが神輿の前に供えられ、神主さんによるお祓いがおこなわれます。

式三番。袖で福を拾い、肩に担ぐようなしぐさを繰り返し、村にたくさんの福がやってくるように祈ります。演じるのは篠原さん。

式三番。袖で福を拾い、肩に担ぐようなしぐさを繰り返し、村にたくさんの福がやってくるように祈ります。演じるのは篠原さん。

トラックに乗り込んで、興福院を出発! 現在は、山車を引くのは危険がともなうということで、このスタイルになりました。もちろん、警察の許可もとられています!

トラックに乗り込んで、興福院を出発! 現在は、山車を引くのは危険がともなうということで、このスタイルになりました。もちろん、警察の許可もとられています!

お囃子は、前を走る神輿を景気づけるために演奏するそうです。

お囃子は、前を走る神輿を景気づけるために演奏するそうです。

篠原さんの引き締まった表情が印象的です。

篠原さんの引き締まった表情が印象的です。

観客はトラックの後からついていきます。

観客はトラックの後からついていきます。

兵主八幡神社から興福院へ

兵主八幡神社は、戦国時代に手賀原氏の氏神として祀られていたもので、兵主神社と八幡社を合祀した神社です。

兵主八幡神社。本殿は雨除けの庇や囲いでおおわれているため、一部しか見られませんが、見事な彫刻が施されていますよ!

兵主八幡神社。本殿は雨除けの庇や囲いでおおわれているため、一部しか見られませんが、見事な彫刻が施されていますよ!

篠原さんを筆頭に、お囃子の皆さんで参拝します。

篠原さんを筆頭に、お囃子の皆さんで参拝します。

境内にある、大杉大名神の祠にもお供えします。

境内にある、大杉大名神の祠にもお供えします。

本殿前のこの一直線の通りは、参道ではなく「馬場」。原氏が軍馬の訓練を行った場所と伝えられています。「子どものときここで自転車の練習をしたよ」と篠原さん。

本殿前のこの一直線の通りは、参道ではなく「馬場」。原氏が軍馬の訓練を行った場所と伝えられています。「子どものときここで自転車の練習をしたよ」と篠原さん。

現存する日本で唯一の転用教会堂「旧手賀教会堂」の前も通ります。

現存する日本で唯一の転用教会堂「旧手賀教会堂」の前も通ります。

↓↓旧手賀教会堂についての記事はこちらをご参照ください↓↓

再び興福院へ! 伝統の舞いをたっぷりと!

興福院に戻ってきたら、境内に建つ手賀構造改善センターで舞いの披露となります。
この日は、「おはやし」と「ニンバ」が演じられました。

「おはやし」のキツネの舞い。子どもたち、釘付けです!

「おはやし」のキツネの舞い。子どもたち、釘付けです!

同じく「おはやし」のシシの舞い。

同じく「おはやし」のシシの舞い。

「ニンバ」の一場面。シシにいたずらして、怒らせてしまうというストーリー。右の「大笑い」の面をつけているのが篠原さん。

「ニンバ」の一場面。シシにいたずらして、怒らせてしまうというストーリー。右の「大笑い」の面をつけているのが篠原さん。

同じく「ニンバ」でのおかめの舞い。女性の演者によって優雅な舞いが披露されました。

同じく「ニンバ」でのおかめの舞い。女性の演者によって優雅な舞いが披露されました。

最後に「ニンバ」の三者が舞います。篠原氏によると、面は手賀ばやしが始まったときから、代々受け継がれているそうです。

最後に「ニンバ」の三者が舞います。篠原氏によると、面は手賀ばやしが始まったときから、代々受け継がれているそうです。

終わりに

当日、篠原さんの教え子である、若手奏者・演者の方にお話を伺ったとき、自分たちが特別な伝統芸能を継承しているという気負いがないことに気づきました。
自分が育った地で、ただ昔の友だちとの共演を楽しんでいる…。

また、仕事で久しぶりに訪れたという手賀出身の方は、変わらず“ある”ということ、昔の友だちが当たり前のように“いる”ことに、興奮した様子で語ってくれました。

手賀ばやしが奉納される手賀の夏祭りは、一年に一度、手賀の人たちが集う日。
外部の私でも、居心地のよさを感じたのは、伝統行事をきっかけにつながる人の気持ちの温かさがあるからではないでしょうか。

来年の7月第一日曜日は手賀のお祭りにも足を運んでみませんか?

次回は、毎年8月16日に西光院でおこなわれている伝統行事「篠籠田の三匹獅子舞」についてお知らせいたします!

興福院山門。いつもは静かな境内にたくさんの人が集まる様子を拝見し、私もこの行事が長く続いてほしいと強く願っています。

興福院山門。いつもは静かな境内にたくさんの人が集まる様子を拝見し、私もこの行事が長く続いてほしいと強く願っています。

興福院

  • 【住所】千葉県柏市手賀712

兵主八幡神社

  • 【住所】千葉県柏市手賀1418

旧手賀教会堂

  • 【住所】千葉県柏市手賀666-2
    【営業時間】10:00~16:00
    【休館日】月曜日(月曜日が祝日・振替休日の場合は開館し、翌平日が休館)、年末年始(12月28日~1月4日)
    ※駐車場あり

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「ちゃーりんぐ柏」代表石井雅子

柏生まれ柏育ち。編集者・箏(こと)奏者。市民活動家の両親が2015年前後に他界したことをきっかけに、柏に興味を持つようになる。2021年、柏の歴史スポットを自転車で巡る「ちゃーりんぐ柏」を立ち上げる(2022年市民公益活動団体登録)。2023年5月、補助金申請や情報発信、連携などをサポートする中間支援団体「ジセダイ歴史文化継承研究所」を設立、事務局長を務める。2024年8月柏に特化した観光会社「かしわグリーン観光社」を設立、代表を務める。

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