【柏】「アートラインかしわ2022」④:柏ゆかりの作家たちのまばゆい空間「共晶点」

【柏】「アートラインかしわ2022」④:柏ゆかりの作家たちのまばゆい空間「共晶点」

「アートラインかしわ」の主催事業として、今年で11回目の開催となる「共晶点」。
柏ゆかりの若手・中堅の作家たちが集結する同展の開催を毎年楽しみにしているという、熱烈なファンも少なくありません。

「共晶点」とは「複数の成分が混ざり合う溶液から共融混合物が生じる温度」。
それぞれの作家の表現が融合し、別の空間に昇華する場でありたという想いが込められています。
今年はどんな化学反応が展開されているのでしょうか?
初日にお会いした4人の作家さんたちのお話とともに、見どころを紹介していきましょう。

「共晶点」を率いる福永明子氏に聞く!

最初に、「共晶点」の代表であり、JOBANアートラインかしわの実行委員でもある日本画家の福永明子氏にお話を伺いました。
Q:今年の「共晶点」の特徴はいかがですか?
福永氏:とにかく作品の数が多いこと。照明が足りなくなったのは初めてです。
Q:制作期間中、腰を痛めたというお話も伺いましたが…。
福永氏:最後の一か月で追い上げました(笑)。
Q:これ全部一気に?
福永氏:はい。日本画は膠(にかわ)の濃度の濃いものから始めて、だんだん薄くしていくんです。ですので、私はいつも4~5点同時に制作しているんですよ。
Q:ものすごい集中力ですね!!

※福永氏については、kamonかしわインフォメーションセンターに掲載されている筆者のインタビュー記事もぜひご参照ください。

一番気に入っているという「八仙花」(あじさい)の前で。「この色合いの美しさに惹かれました」と福永氏。

一番気に入っているという「八仙花」(あじさい)の前で。「この色合いの美しさに惹かれました」と福永氏。

「自然を自然のままに描きたい。花がひっくり返っているところもそのままに」と語る福永氏。そんな植物の自然な姿にも注目してみてください。

「自然を自然のままに描きたい。花がひっくり返っているところもそのままに」と語る福永氏。そんな植物の自然な姿にも注目してみてください。

オープン前に、作品タイトルをつける福永氏。左奥には筑紫百合子氏の「鰐の種」も見えています。

オープン前に、作品タイトルをつける福永氏。左奥には筑紫百合子氏の「鰐の種」も見えています。

襖絵の新たな広がり――島田由子氏

会場に入った瞬間、目に飛び込んできたのが、柔らかい黄色(の襖絵)。
この島田氏の作品を熱心に見ていらっしゃるお客様が気になり、お話を伺いました。

Q:「共晶点」は毎年来ていらっしゃるのですか?
お客様:はい。3~4年前から。
Q:「共晶点」の魅力は?
お客様:いろいろな種類の作家さんの作品を見られることですね。また、地元ということで、「子どもと同じ中学出身の作家さんだ」などと話しながら、親しみをもって見られるのも楽しいですね。

黄色の2枚の作品のうち左側が「ピースがいるよ」、右側が「四つ葉をさがせ」。「四つ葉のクローバーあった!」と話しながら鑑賞される様子を拝見して、思わずお声がけしてしまいました。

黄色の2枚の作品のうち左側が「ピースがいるよ」、右側が「四つ葉をさがせ」。「四つ葉のクローバーあった!」と話しながら鑑賞される様子を拝見して、思わずお声がけしてしまいました。

さらに、このお客様から、島田氏をご紹介していただきました。

Q:昨年までの作風と違うような印象を受けましたが…?
島田氏:はい。長年、襖絵をメインに空間づくりを目指して制作をしてきましたが、とある産婦人科の先生から、病院の天井画を依頼されたんです。入院される方は不安な気持ちを抱えながら、横たわって過ごされるので、遊びがあったり楽しくなったりするような要素も入れて。
Q:それで、四つ葉のクローバーを!
島田氏:私自身、見つけたことがないんですけど(笑)。
Q:見る人の心に寄りそってくれるような気持ちになります。制作でのご苦労などはあったのですか?
島田氏:今回はお話をいただいてから、考えている時間の方が長かったんですよ(笑)。

気さくにお話くださった島田由子氏。自身の作品をバックに、滝上優氏の作品「p嬢」とともに。

気さくにお話くださった島田由子氏。自身の作品をバックに、滝上優氏の作品「p嬢」とともに。

和の新境地――宮田琴氏

「ハートのぐい呑み」や、柏市のふるさと納税の返礼品となっている「コーヒードリッパー」などで、金工作家・宮田琴氏の作品を目にした方も多いのではないでしょうか。
さて、今回の作品は…!?

Q:今回はお茶道具ですか!?
宮田:はい。金属でお茶道具を作りました。新たなお茶の世界をお楽しみください!
Q:どんな思いでお茶道具を?
宮田:実は、最近、お茶をならい始めたんです。日本の文化、四季を感じて、おもてなしする心、日本人の心の温かさを感じました。それを表現していきたいです。
Q:こんなにキュートなのに、侘び寂びもあって…。
宮田:伝えるものはしっかり伝えていって…。お茶道具を作ることで、伝統を守ることを改めて感じました。日本ってすごいなと。

※宮田氏については、kamonかしわインフォメーションセンターに掲載されている筆者のインタビュー記事もぜひご参照ください。

宮田氏の作品と、背後にある吉岡亮兵氏の作品「川」、石元靖大氏の日本画が、偶然(!)調和して、やさしい雰囲気の空間ができていました。

宮田氏の作品と、背後にある吉岡亮兵氏の作品「川」、石元靖大氏の日本画が、偶然(!)調和して、やさしい雰囲気の空間ができていました。

こんなかわいいお椀で飲めるお茶席があったら…夢がふくらみます!

こんなかわいいお椀で飲めるお茶席があったら…夢がふくらみます!

初参加! 寺前有海氏

今回初参加となった彫金作家の寺前氏。JOBANアートラインかしわの実行委員でもあります。

Q:初参加…どんなお気持ちですか?
寺前氏:子どもの頃からずっと見てきた展覧会なので、やっと出られるという思い、やっと柏の作家に仲間入りしたという思いです。
Q:なぜ彫金なんですか?
寺前:キラキラしたところが好きなのと、手のなかでモノを作ることができるからです。
Q:作品自体は落ち着いたトーンになっていますね。
寺前:落ち着いた色味のなかでも、金属の色の幅を感じさせるような作品にしていきたいと思っています。
Q:(作品を見回して)確かに! 本当にいろいろな色で表現できるんですね! 植物が多いですが、植物がお好きなんですか?
寺前:はい。植物のやわらかさ、繊細さを出したいですね。
Q:銅で!
寺前:はい。立体感も!

日本画をヒントにしているという寺前氏の作品。和を感じさせる落ち着いた作風がステキです。

日本画をヒントにしているという寺前氏の作品。和を感じさせる落ち着いた作風がステキです。

私は一番手前の「藍」という作品に一番グッときました。少し離れたところから眺めて、作品が飛び出してくるような瞬間を感じてみてください!

私は一番手前の「藍」という作品に一番グッときました。少し離れたところから眺めて、作品が飛び出してくるような瞬間を感じてみてください!

まだまだたくさんの作品があります!

今年の「アートラインかしわ2022」のテーマは「いきものゆかし」。
「共晶点」に参加している17人の作家さんたちの作品も、様々な命の輝きを放っています。
一つひとつの作品をゆっくりご堪能ください!

羽室功二氏の「ハレルヤ!」「ましゅろん」。このネコくん(ハレルヤ)の面構え、好きです。

羽室功二氏の「ハレルヤ!」「ましゅろん」。このネコくん(ハレルヤ)の面構え、好きです。

折紙作家・勝川東氏の「incarnation」。これ本当に折紙!?

折紙作家・勝川東氏の「incarnation」。これ本当に折紙!?

名雪大河氏の19点にわたる作品群。カエルを主人公に、春夏秋冬の日常生活が表現されています。

名雪大河氏の19点にわたる作品群。カエルを主人公に、春夏秋冬の日常生活が表現されています。

野田一民氏の色彩鮮やかで力強い作品群。いつも元気をいただいています!

野田一民氏の色彩鮮やかで力強い作品群。いつも元気をいただいています!

松隈健太朗氏の作品群。白壁に映ったフォルムの影も興味深いです。

松隈健太朗氏の作品群。白壁に映ったフォルムの影も興味深いです。

羽室陽森氏の「Drifting」。彼女がどこに向かおうとしているのか…気になります。

羽室陽森氏の「Drifting」。彼女がどこに向かおうとしているのか…気になります。

最後に…

今年の「共晶点」の一部をご紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか?
どの作品も優しく調和し、見る人の心に自然に入ってくるような、包み込んでくれるような印象を受けました。
感覚の鋭い作家さんたちが、一様に、時代の“何か”を感じ取って表現しているということではないでしょうか。
共感、癒し、潤い、慈しみに満ちた空間でした。

「共晶点」は、11月13日(日)まで。
柏駅周辺にお越しの際は、ぜひパレット柏の柏市民ギャラリーにお立ち寄りください!

アートラインかしわ2022ツアー(2回目)

11月13日(日)には、「共晶点」と「島田忠幸の動物たち」をめぐるツアーが実施されます。
解説付きツアーで「アートラインかしわ」を楽しみたいという方はせひご参加ください!

開催日時:11月13日(日)14:30~16:15(14:15受付開始)
集合場所:パレット柏 柏市民ギャラリー
料金:無料

↓↓参加ご希望の方は、下記の「アートラインかしわ」のウェブサイトよりお申し込みください↓↓

共晶点

  • 【開催期間】2022年11月9日(水)~11月13日(日)10:00~19:00
    ※初日は13時から。最終日は18時まで。
    【会場】柏市民ギャラリー(DayOneタワー3F パレット柏)
    【料金】無料

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「ちゃーりんぐ柏」代表石井雅子

柏生まれ柏育ち。編集者・箏(こと)奏者。市民活動家の両親が2015年前後に他界したことをきっかけに、柏に興味を持つようになる。2021年、柏の歴史スポットを自転車で巡る「ちゃーりんぐ柏」プロジェクトを立ち上げ、2022年市民公益活動団体として登録。2023年5月、補助金申請や情報発信、連携などをサポートする中間支援団体「ジセダイ歴史文化継承研究所」を設立、事務局長を務める。

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